希望格差社会

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
2004 筑摩書房
山田昌弘

「勝ち組」「負け組」,「勝ち犬」「負け犬」・・・どこかでうすうす感じ始めている二極化.
家計の二極化.生活水準の二極化.教育の二極化.etc・・・・

そうしたものに正面からスポットを当てた斬新な一冊.

これらを読み解く最初のキーワードは「リスク」.
さまざなま社会の流れの末に,自由に人生の選択が可能な社会になりつつあるが,それは逆に選択に伴う新たな危険に出会う可能性が増えつつある.

これは主に3つの格差をうむ「職業の格差」「家族の格差」「教育の格差」

格差の発端はニューエコノミーと呼ばれる新しい経済活動へのシフト.それは,大量生産・大量消費を前提とした終身雇用・年功序列のモノつくりの経済活動ではなく,人々が何を望んでいるのかを的確に把握し,オタク的に物事を追求していく「専門的な中核労働者」による経済活動への転換.これが「職業の格差」を押し広げる.

その結果,仕事は二極化され,それは家計の格差をもたらし,やがてそれは「家族の格差」となる.すなわち,「自ら好きなライフスタイルを選べる人」と「強いられたライフスタイルを強制される人」.こうした「家族の格差」は,遙か昔にも存在していたものだが,昔は「教育」が階層上層の手段として,社会の中でうまく機能していた.

しかし,いま教育と職業をつなぐパイプラインが漏れ始めている.それが,学習意欲の格差をうみ,結果として「教育の格差」が生じるようになる.現に学力が低い生徒ほど現状肯定感が強いという.

そうして最後に生まれるのが「希望の格差」
苦労の免疫力が衰えているため,努力が報われるという「希望」をもてない人々が,絶望感とくに他人が自分と同じ不幸になることを願うという=「エンビー型」の嫉妬心をもちはじめる.


向かう方向は全体として暗い.
しかし,できることをやらなければならない.とくに教育の現場では.
苦労の免疫力をつけていくこと,
「やりたいこと」を強調しすぎず,過大な期待をクールダウンさせるシステムをつくること,
人生設計の中期的見通しをたてさせること,etc・・・

是非とも学生・先生達に一度目を通してもらいたい本である.




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