日本人の名前の歴史

日本人の名前の歴史
1999/新人物往来社 奥富敬之


以前から,日本人の名前について,とくに一般庶民の名前の歴史について知りたいと思っていたのですが,なかなかそういった趣旨の本に巡り会えませんでした.
この本は,ふとしたときにようやく,見つけたので則購入してみました.


歴史的に名前を見ようとすると,古い時代の名前を分解して,それぞれの意味を理解しなければならない.
たとえば,姓名と名字は別物であるということ.職名,仮名,荘名,実名というものがあるということなど.
これらを各時代にそって記号を扱うように分解し,読み解いていくので,正直言って非常に読みにくい.
この本はどっちかというと専門書の部類ですね.

ある程度,目的を持って適度に拾い読みしないと,私のようなものにはとてもじゃないけど最後までたどり着きません.

ですので,この本については“レビュー”としてではなく,私なりに一般庶民に関わる名前の歴史を拾い読みしたものを整理することとします.あしからず.



そもそも姓名とは,天皇から拝受するもの.
これは天皇を上位者と認め,忠誠を誓うことを意味する.
だから,天皇一家には姓名がない.もし,天皇に姓名があるとしたら
「誰から拝受したの?」という大疑問がわき上がる.

姓名はまず天皇にもらったものである.
天皇の臣下であれば,皆に姓名がある.
与えた姓名には,とくに一定の基準のようなものはなかった様子.
時代劇などで四姓としてあがめられる「源平藤橘」なども,とくに意味はないという.
1200年頃にインドや中国で用いられた概念を利用しようとして,平氏が取り入れたものらしい.

名前が“与えられる”ものであれば,当然“奪われたり”,“削られたり”,“変えられたり”する.
そうやって変化しながら時を経た奈良時代には,ほぼ全員「姓名」を持っていたという.ちなみにこの時代に“百姓”という言葉がある.これは“数多くの姓名”という意味.すなわち一般庶民のことをいうのだとか.


しかし,源平合戦を境に,武家社会が訪れると,武士を中心に,名字として住所の地名が用いられるようになってきた.名字=「名字の地」.それは,本人あるいは先祖が命がけで開発した領地を名字とすること.そうして,自分の領主であることを誇示するようになった.

こういう意識が台頭して来るに連れ,領地を持たない者達は「姓名」や「名字」を公にしなくなったという.
やがて,非領民が名字を公称することを悪事とする意識が芽生えた.


こうして,一般に信じられている一つのガセビアが浮かび上がる.
“一般庶民は苗字を持っていなかった”と.


実は,違っていたようですね.苗字は持っていたけれど,それを名乗っていなかった.
それが本当のようです.

ここで一つ整理しておきましょう.
「姓名」というのは,公称.天皇からもらったもの.
「苗字」は,私称.いわばニックネーム.ニックネームなのでもちろん地名などもあった.
「名字」は,鎌倉時代,称号が個人名から一定の家系を呼び表すようになってからのもの.名字の地となる.

そして,今でいう姓名の「名」を,「実名」といい,親から子に与える呼び名.


この「実名」.昔から神秘的な呪術力あるいは,生命があると信じられたことから,他人に実名を知られると呪われる危険性があると考えられていた.これが派生して,他人に実名で呼ばれるともともと実名がもっていた呪術力が消えると信じられていたらしい.だから,出来るだけ実名を隠していたという.
ちょっと前の“写真に写されると魂が抜ける”といったものに近い感覚ですね.これは.

さて,こういった名前の歴史は,明治維新によって新たな時代を迎えます.
明治2年(1869)に,新政府によって一部特権階級(華族,士族)をのぞいて,身分差別が撤廃されます.
翌3年.「自今,平民の苗字,差し許さるるのこと」ということで,苗字を名乗ることが許されます.
これは“戸籍法”を作るため.そして,この戸籍法は“徴兵”するためであり,“租税”するためでありました.

そして,予定通り翌4年に戸籍法が作られ,翌5年に戸籍登録が行われました.
このとき,「家族同一苗字令」がだされることになったとのこと.

ただし,このとき長年の“苗字を名乗ることは悪事”という風習のおかげで,多くの庶民は苗字を忘れていたために,新しい苗字を作って登録することになったという.
ただし,どさくさに紛れて律令官職名や国の名前などを付けないように,規制を設けたとのこと.

こうやって,今現在,私たちがもつ名前となるに至ったということです.

日本人がもつ,名前に対する特別な観念の一端を知ることが出来たという意味では,私にとっては有意義な本でありました.



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