ポピュラーサイエンスの時代

ポピュラーサイエンスの時代―20世紀の暮らしと科学
2006/柏書房  原 克



サブカルチャーとしての科学を捉えたちょっと面白い本でした.

私たちは,正確な科学知識によるよりも,曖昧な科学イメージからうける影響が大きい.
宗教とは対極にあるものなのに,時に神話的な作用を大衆にもたらしてしまう科学情報.

たとえば,本書の「おわりに」にハレー彗星の記述があります.
中世キリスト教社会では彗星は異常現象であり,神の怒りや天災の前兆とされた.
その後の科学の発展で,解かれたはずのそんな妄想達は,今度は科学的根拠をあらたに身にまとった科学時代の新たな恐怖として1910年に再び現れた.
たとえば,彗星のシッポには窒素ガスやシアンガスなど有毒な気体が充満している.
たとえば,彗星が地球に接近した場合,シッポが地表を覆い地上の生命体が死滅してしまう.などなど.

科学的には正確ではないのに,窒素ガスとか軌道とか,科学的な響きがする非日常的な言葉に,もっともらしさを感じさせ,人々に大きな影響を与えている.


そんな,語謬をふくんだ「科学イメージ」,大衆化した科学情報が現代に至るまで私たちにもたらしたものを,さまざまな事例で紹介しています.


本書の中で私は,第1章「心地よい身体」で科学情報の影響力にまんまとしてやられたという思いと,無意識に刷り込まれた科学の神話作用に思い至り,ハッとする思いがしました.


たとえば,私たちは本当に“清潔さ”を「求めている」のか?単に「求めている」と思わされているだけなのではないか?

本書は,そんな科学によって「消費」させられている“清潔さ”といったイメージを今一度,考え直すきっかけになるかも知れません.



後半,ややそういった論点がぼけてしまうのが,残念なところか・・・.
でも,刺激をうける本ではあります.


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