「あたりまえ」を疑う社会学

「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス
2006/光文社新書 好井裕明




取っつきやすいタイトルと軽妙な語り口で社会の様子を綴る新書の出版が相次いでいますね.そういった多くの新書の一つかな,と軽い気持ちで手にとったのですが,良い意味で裏切られました.


他者と自分との繋がり,関係のありようを読み解いていく営みとしての社会学.
本書は,その社会学の“営み”自体を真摯に丁寧に綴っていく.
そうして,核とするところの,「あたりまえ」性と「普通であること」の感覚の裏に潜むものを浮き彫りにしていく.

人々が生きている現実をはかろうとする社会学.
アンケートによる調査や聞き取り等を解析し,数値化し,理論化して仮説と照らし合わせていく.そういう“科学的”方法の他に,対象とする“そこに生きている人”と同じように,研究者自体が一人の人間として,相手に向き合い,語り合って,生活をめぐる物語を構築していくというエスノメソドロジーという方法がある.

そのエスノメソドロジーを通してみるとき,聞き取ろうとする者が,相手の存在や生活をめぐり,いかに既存の知識やカテゴリー,思いに囚われ,影響を受けているのかを批判的に見ることができるという.

大衆演劇,ゲイ,暴走族,医療,福祉施設・・・さまざまな場所で営まれる人々の生活に向き合おうとするときに,見えてくる「私自身」が囚われている「あたりまえ」に対する違和感.それは多くの場合,身勝手な「決めつけ」を産み,無邪気な暴力性を発揮する.

この感覚は,私たちの身近に驚くほど満ちている.何気ない会社の中に,学校の中に,男女の会話の中に.そしてTVの中に.

大切なのは,「あたりまえ」の世界で,さまざまな縛りを受けている「私」の姿をみつめること.「普通である」という感覚に居直らないこと.そういうことが,とても丁寧に真摯に語られています.


最近,人の営みについて思いを巡らすことが多かった私にとって,タイミングよく本書に出会うことができ,思いを新たにしました.
あとがきにもありますが,ぜひ多くの方に読んでもらいたいですね.とくに学生さんに.社会学とは関係なくとも,得られるものが多い本だと思います.








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