ゲド戦記 1 影との戦い

ゲド戦記 1 影との戦い
2006/岩波書店 ル=グウィン/清水真砂子訳



指輪物語,ナルニア国物語同様,古くから読み継がれてきた魔法世界を舞台にしたファンタジー.


第一巻では多くの物語と同様,主人公「ゲド」自信の成長の物語が綴られている.


無邪気な少年の単純な「力=魔法」への憧れと,他者よりも力に優れることに気づいたところから始まる邪な優越感.これらは,時代や世界が違っても若者が抱くものである.

しかし,人生の転機に良い指導者に出会うことにより,主人公は反発し,苦難を経験しつつも徐々に心の見つめる先をかえ,思慮深さを獲得し,成長していく.

私にとって興味深かったのは,折に触れゲドに行先を示す,こうした人生の先達たち,魔法の「長」達の思慮深い言葉の数々.
その中でもとくにこの言葉は,私の心を捉えました.

「そなた,子どもの頃は,魔法使いに不可能なことなどないと思って追ったろうな.
 (中略)
 だが,事実は違う.
 力を持ち,知識が豊かに広がっていけばいくほど,その人間のたどるべき道は狭く
 なり,やがては何ひとつ選べるものはなくなって,ただ,しなければならないこと
 だけをするようになるものだ.」



ゲド戦記は魔法世界のファンタジーですが,ここでひとつ私なりの視点を提示してみます.

それは,魔法を科学と読み替えてみること.
そうすると,科学者達が生涯をかけ真摯にたった一つの自然の真を突き止めようとする営みや,それによって明らかにされた「自然の真」を世界のバランスの上でどう扱っていくべきかの試行錯誤の歴史を一人の人間を通して語っているようにも見えます.

さすが,読み継がれるだけあって,様々なメタファーが混在する含みのある深い物語ですね.




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