水理学史

水理学史 (1974年)
1974/鹿島出版会 H.ラウス・S.インス:著 / 高橋裕・鈴木高明:訳



本書のまえがきにライプニッツの言葉を引用したくだりがあります.
「歴史の研究に価値があるのは,過去の人間を正当かつ公平に扱うだけでなく,現在の人間に,彼ら自身の努力の方向への指針を与えるからである.」

本書は,人類の発生から20世紀までの水理学の歴史をかなり詳細に追った意欲的な本です.
といっても初期に於いては,「水理学」という細分化された物は存在せず,17世紀頃まではただ「水」をあつかう技術として,経験的なものが理解されていたに過ぎません.

興味深かったのはルネッサンス期からの科学復興期,現在で言う水理学が天文学などと並んで最先端の科学分野であったということでした.水の流れる様は,地球上の物体に作用する力の現象の一曲面.多くの先人達は水の実験を通して,力学を発展させていた.だから,水理学の歴史のラインにはレオナルド・ダ・ヴィンチや,デカルト,ガリレオ・ガリレイ,ニュートンなどものってくる.これだけで,「水理学」を学ぼうとする物に大きなモチベーションを与えるように感じます.

その後の純粋な水の力学としての「流体力学」と,より実践的な問題に答えるための「水理学」とに学問分野が分化していった過程や,それぞれの分野が及ぼした影響などを知ることで,一科学者としての在り方をもいろいろと考えさせてくれます.
また,補章として日本における水理学の歴史もつづられています.日本の場合はとにかくまず西欧で発展した科学を吸収することと,日本独特の急流河川対策に尽力し,より実践的な「河川水理学」が発展してきたことがよく理解できました.

ベルヌーイやオイラーが活躍したときまだ日本は八代将軍徳川吉宗の全盛期だったということを考えただけでも,日本がどれだけ遅れていたかがわかります.

とにかく歴史を知るというのは,モチベーションにつながりますね.
残念ながら絶版となっているので入手するのは困難ですが,図書館にあるはずのこの本を,水の研究をしようと思っている学生さんなんかは,読んでみるといいと思います.



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