人はいつから「殺人者」になるのか

人はいつから「殺人者」になるのか
2005/青春出版社 佐木隆三





正直言って,読むほどに気分が滅入る本です.
悲惨な事件の顛末とその行為そのものの描写に,反吐が出そうな気味悪さを感じることもありますが,それ以上に「殺人」に至るまでに加害者が味わった「善良な一般人」たちの陰湿な不正の数々が明かされるにつれ,やるせなくなってきます.

登場するのは誰もが知っている凶悪な事件の加害者ばかり.
 奈良県女児誘拐殺人・死体損壊遺棄事件:小林薫
 大阪府池田小大量殺人事件:宅間守
 北九州監禁連続殺人事件:緒方純子
 和歌山毒カレー事件:林真須美
 坂本弁護士一家殺人事件:岡崎一明
 地下鉄サリン事件:林郁夫
 音羽幼女殺害事件:山田みつ子
 ホステス殺人事件:福田和子
 中州ママ連続保険金殺人:高橋祐子

本書は,彼らが事件に至るまでの生い立ちを丁寧に追っています.
「そのとき」とはどういう状況だったのかを焦点にして.


こういった凶悪犯の加害者たちを私たちはえてして,「あいつは私たちと違っておかしいから」と,その加害者と自分たちとを切り離し,考えないようにしてしまいます.
しかし,彼らとて人間.私たちと同じように生まれてきたはず.誰一人生まれながらに「殺人者」として生きていない.夢を抱きながら幼少期を過ごしてきたはずなのに,どこかのタイミングでなにかがずれていくのだ.

それはもしかしたら,私たちにも起こったかもしれないということを頭に入れておきたい.人は環境によっていかようにも変化しうるもの.今ある環境は何かの弾みで明日崩れるかもしれない.そのとき私たちは,今と同じように平常にしていられるのだろうか.

内容からして,本書はとても読むものに訴えかけるものが多く,とても刺激的でありました.しかし,タイトルである人はいつから殺人者になるのかという命題に対して,数多くの凶悪犯罪者を見てきた筆者の目で何かしらの総括をしてほしかった.

その点を抜きにしても,正直ちょっと購入するのをためらうタイトル・内容ではありますが,本書を読んで良かったと思っています.







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