百年前の私たち





「昔は良かった」と無責任に,得意げに語る大人が私はとても嫌いです.
年若いものを前にして,ただ少し早く産まれたがために,主体的に動いていないのに,見聞きした内容を知っていると言うだけで,優越感に浸りながら語るときの大人がとにかく嫌いです.

「昔は良かった」という言葉を聞く度に私に起こる疑問は,「本当に昔は,今よりも良いのか?」でした.この本は,私のこの疑問に答えるかのような内容でした.
冒頭にこう書いています
「「昔は良かった」とか「昔はこうだった」とか,「昔」と言う言葉を使いたがる人は少なくない.・・・きちんと限定しない「昔は良かった」発現では,決して生産的な議論はできない.・・・たいていは自分の生きてきた時代のことを「昔」と言っているか,でなければなんとなく自分が理想だと思っている時代を「昔」という言葉で語っているにすぎない.」

これを読んで,昨今の豪雨や洪水のニュース,桜の開花や,猛暑日にかんする気象の話題などでTVで見聞きする「昔はよかった」を思い出しました.本質は同じですよね.

本書は,漱石研究の傍ら集めた多くの出版物の記事を通して,100年前の日本の世論がどのようなものであったかを浮き彫りにしています.

本書を読むとまずこれからは「昔は良かった」と自分は決して言わないぞ!っという思いになります.100年前の日本は,なんと差別的で,抑圧的で,自由のない世界だったか.なんとも貧しく,激しい格差社会であったか.映画や小説などにうつるちょっと上流な人々と,一般人との間に大きく横たわる溝を感じることができます.

後半は女性への差別意識について多くの章をさいていて,ちょっと最初の趣旨と変わっているのでは?と思わないでもないですが,全体的に現代に生きる私たちにとって,社会のあり方・とらえ方について示唆に富む本だと思います.


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