恋文の技術


恋文の技術
ポプラ社
森見 登美彦


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京都大学の大学院生が,研究のため飛ばされた実験所から妹や友人たちに送った手紙を集め,その前後する内容から物語を浮き彫りにしていくというちょっと変わった構成の物語です.
面白いのは,載せられている手紙は相互ではなく,主人公・モリタからの手紙だけという点.相手からの返信は載せられていないので,モリタの返信内容から想像するしかないのだけれども,その「想像するしかない」状態に敢えておくところにおもしろみがあるなぁと感じました.

一般の人が真剣に文章を書くという場面は,そうそう無いと思います.
もっとも真剣に書く文章は,おそらく「手紙」.
そして,その手紙の中でももっとも真剣に文章を選び書くのが「恋文」でしょう.モリタはあるとき傍手紙にこう書いています.

「何遍も何遍も恋文を書いては破き,書いては破いているうちに,俺は文章というものが何なのかわからなくなってきました.「文章を書く」という行為には,たくさんの罠がひそんでいる.俺たちは自分の思いを伝えるために文章を書くというように言われます.だがしかし,そこに現れた文字の並びは,本当に俺の思いなのか?そんなことを,誰がどうやって保障するのか.書いた当人だって保障できるかどうかわからない.自分の書いた文章に騙されているだけかもしれない.じぃっと考えては書き考えては書きしていると,不思議でならなくなってくるのです.自分の想いを文章に託しているのか,それとも書いた文章によって思いを捏造しているのか.」

その後も試行錯誤を重ねた彼は,大事な人にこう書きます.
「ただなんとなく,相手とつながりたがっている言葉だけが,ポツンと空に浮かんでいる.この世で一番美しい手紙というのは,そういうものではなかろうか」と.

人とのつながりは,言葉によってもたらされます.
そこに変な飾りは要らない.
ただ,あなたとつながっていたい.その思いだけで良い.
多くの言葉を紡いできたこの本の著者が,私たちにそういってくれているように感じました.


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