テレビ的教養

テレビの誕生と,放送局の発展・統合の歴史を振り返りながら,テレビが日本人に与えた影響を様々な文献資料を基に紐解いた専門書.

各時代に観られるテレビの識者達による捉え方と,市民の捉え方の変遷は大変興味深いものでした.

そして本書は,「テレビは家族のコミュニケーションを破壊するという批判が今では圧倒的だが,テレビ登場以前の一般家庭に必ずしも豊かなコミュニケーションが存在していたわけではない.「テレビ的教養」と呼ぶべき何かが存在したように感じる.」というテレビが市民の教養へどう機能していったかを掘り下げていきます.

大宅壮一のこの引用は象徴的でした.
「いまだデモクラシーが個人的に肉体化されていない日本の現状としては,せめてこういうマス・メディアへの接触が,そのまま大衆と政治との接触点であることを考えれば,”総白痴化”という言葉を返上して,”総博知化”とする意味も理解されることだろう.」

そして,戦争,高度成長を経た今の日本社会の中に居続けたテレビは,様々な役割を担ってきた.
その結果として,「すでに半世紀以上にわたりテレビを長時間視聴し続けた結果として,日本人の学力は低下していない.だとすれば,テレビを観ないことは市民の美徳ではない.」と結論づけています.

そして,その長所と短所を踏まえた上で「テレビ的教養は最良の教養ではないだろう.しかし,より良い輿論を生み出す公共圏への入場券として,それは必要な最低限の教養である.(中略)テレビ的教養は,国民すべてをカバーする教養のセイフティ・ネットとならなくてはならない.」とする著者の主張に,深く納得しました.


専門書なので大変読みづらいですが,日本社会の見方を学ぶには良い本だと思いました.




テレビ的教養 (日本の“現代”)
エヌティティ出版
佐藤 卓己


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